部屋の中に散らばった、しんどい感情の塊をさわってみる。
どれも大きくて
そのままだと今の私には動かせそうにない。
その中のひとつを、片手でつかめるくらいに小さく削ってみた。
持ってみると、冷たくて、少し重たい感じがする。
手に持っているそれを、きれいな水に浸してみる。
最初はなんの変化もなかったけれど
浸しているうちに
石みたいだった塊が、水分を含んで柔らかくなってきた。
汚れやくすみが取れ、ほんのりきれいな色も出てきている。
水分を含んだ、きれいな塊。
陽の光にあてていると、水分がとんで
今度は綿のような、羽のような…ふわっとした何かの繊維みたいになってきた。
他の塊は、どんな色になるのだろう。
削って、水に浸して、乾かしてを繰り返し
いくつか窓際に並べてみた。
いろんな色がふわふわと並んでいる。
キラキラしているのもある。
きれいだなぁ…。
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わたしは
夢中になって、小さな塊をいくつも削っていたらしい。
窓際にきれいな色が並んだ分、
大きなしんどさの塊が小さくなって、部屋が広くなっていた。
せまいと思っていたわたしの部屋にスペースができた。
なんとなく思い立って
空いたスペースで、窓際のふわふわとした繊維のようなものを紡いでみることにした。
白い綿みたいなのや、透き通った水色の羽みたいなのや。
赤くって、麻のように太い繊維みたいなのもある。
いろんな色の糸が出来上がったら、これを布にしてみよう。
布になったら
カーテンにしようか、テーブルクロスにしようか
それとも、キラキラしたのばかりを集めてスカートを作ろうか。
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しんどいと思っていた感情の塊から
きれいな「わたし色」が生まれてきた。
今はカーテンや、スカートやブラウスに形を変えて、私の世界を彩ってくれている。
引き出しに大切にしまってあるのもある。
眺めると、しんどかった時の事を思い出すけど、つらくはない。
純粋に「ありがとう」と思える。
あの人の「わたし色」はどんなだろう。
今度聞いてみたいな。
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